ますますギラギラと太陽が照りつける中、今年も訪れた夏休み。
退屈な学校から解放されるこの素晴らしいひと時に例年と違う曇りがあるとすれば、それは一点。
あの女の顔を見る機会がなくなるということに他ならない。
ラブホテルでの一件以来ほとんどまともな会話を交わすことなく突入してしまった長期休暇。
このまま手をこまねいて秋口の始業式を待つことになるのかと苛立っていた俺の耳に、
あいつが友人と海に行く計画を立てているという情報が転がり込んできた。
水着につられているわけじゃない。決して水着につられたわけじゃない。
誰にともなく主張しつつやってきた地元の砂浜。
それなりの人手で賑わう中でも、普段にも増して眩しい姿はすぐ見つかった。
極力平静を装ってかけた声。
先日の出来事もある。少しばかりぎくしゃくするのは仕方ないことだろう。
それでもとにかく、久しぶりに想い人と言葉を交わす喜びに浸っていた時のこと。
「あーらもう!や〜ねぇ見せつけてくれちゃって。こんなところで彼女とデート?」
あらぬ誤解をするだけしたあの野郎は、撤回する間もなく雑踏に姿を消したのだ。